【女子サッカー】「結果にこだわることで道は開ける」――テキサスで戦う女子サッカー選手 川渕碧空さんの挑戦

アメリカ・テキサス州の Navarro College(ナバロ・カレッジ) で勉学に励みながら、女子サッカー部の選手 として躍動している川渕 碧空さん。
今季はシーズンが始まって約一か月のところ、9得点・4アシスト(9/29/2025時点)、チームは全米2年制大学ランキング3位・無敗という滑り出しです。
中学時代に見た高校女子サッカー全国大会のテレビ中継で「卒業後にアメリカへ渡る選手」の紹介を目にし、かっこいいと感じたことが出発点だったと話します。
本インタビューでは、海外進学のきっかけ、準備、大学サッカーのリアル、生活やメンタル、キャリアの展望、そして後輩へのメッセージまで、率直に語っていただきました。

コンテンツ

選手プロフィール

名前川渕 碧空(かわぶち あおい)さん
所属大学Navarro College(アメリカ・テキサス州)
専攻General Studies
ポジションストライカー / アタッキングミッドフィルダー
経歴佐久長聖高校(長野県)卒業後、テキサス州 Navarro College(2年制大学)へ進学。

自己紹介・現在の環境

現在通っている大学・専攻・サッカー部でのポジションを教えてください

川渕 碧空です。
アメリカ・テキサスのNavarro Collegeに在学しており、専攻は一般教養です。女子サッカー部ではストライカーとアタッキングミッドフィルダーとしてプレーしています。
今シーズンは9得点・4アシストです(9/29/2025時点)。あと3点、2点取れば昨季と同じスコアになるので、いいスタートだと感じています。チーム自体は全米のランキングは3位で、今シーズンはまだ負けていません。シーズン開始から約1カ月ですが、頑張っています。

アメリカ進学を目指したきっかけ

いつ頃から「海外進学+サッカー」を意識し始めましたか?

中学生のとき、高校女子サッカー選手権の中継で「この選手は卒業後アメリカへ行きます」という紹介をされているのを聞き、かっこいいなと思ったのがきっかけです。
そこから少し海外に憧れの気持ちを持ちつつ高校を選ぶ際、たまたま世界を目指せるプログラムと実際に海外を目指している先輩方がいる環境があり、そこに飛び込みました。それからも色々と偶然が重なってアメリカへの道が開けたと感じています。

高校時代、日本でのサッカーと勉強の両立はどうしていましたか?

サッカー部の学習会や朝の英会話レッスンで英語の学習時間を確保していました。
学校の勉強とサッカーが最優先だったので、空いた時間で英語に取り組んでいました。
正直、とても大変でした。やりたいのにうまくできない、やっても思ったように伸びないの繰り返しでしたが、1歩先、2歩先で海外を目指したりすでに海外で頑張っている先輩方の存在に支えられて頑張れました。

海外進学を考えるうえで一番不安だったことは何でしたか?

英語のテストスコアがないと大学へ進学できないことが一番不安でした。
もう一つは、日本と進学方法や時期がまったく異なる点です。ワクチンや入学手続きなど分からないことだらけでしたが、サポートを受けつつ説明していただけたので大きな不安は残りませんでした。
サッカー面の不安は正直なく、自分がどこまで通用するのか楽しみの方が圧倒的に大きかったです。

準備プロセス

英語学習はどのようにしましたか?

朝5時30分からのオンライン授業に参加し毎日登校前に勉強していたのと、TOEFLやDuolingoの参考書で自主学習もしていました。

奨学金はどのようなオファーを受けましたか?

高校在学中に長野県で実施されたIDキャンプがきっかけでNavarro Collegeへの進学に決め、そのタイミングで奨学金の話が進みました。
現在は授業料の60%免除に加え、寮費と食費も免除されています。日本の大学と比べると負担はおよそ半分という感覚で生活できています。

渡米前にやっておけばよかったと思う準備はありますか?

英語は、試験勉強ももちろん大切ですが、コミュニケーションのための英語(特にリスニングとスピーキング)が重要だとこちらに来て痛感しました。
オンライン英会話や学校の英語の先生と英語で話すことなどを、もっとやっておくべきでした。
大学の勉強は、TOEFLやDuolingoに取り組んでいたので、「やればできる」という感覚はありました。試験対策としてしていた勉強も実際に授業を受けていく上ではとても役立っています。
競技面は、シーズンが8月開始なので、渡米前に自分の強み・弱みを把握して強化しておくことが大切です。
そうすれば気持ちに余裕が生まれ、自信もつくと思います。

大学生活とサッカーのリアル

1日のスケジュールを教えてください

月曜〜木曜が授業日で、毎日2コマ(9:30〜12:30)受けています。
13:00〜16:00はトレーニング(ミーティング含む)です。
その後は自主練や課題、予習、復習、チームメイトと湖に行く・食事に行くなど、メインで頑張らなくてはいけないことはしっかりと力を入れつつ、アメリカ留学ならではの生活や息抜きもしています。

学業とサッカーを両立するうえで工夫していることは?

計画を立ててメリハリをつけることです。
サッカーでは毎日やることを決めて積み重ねる(筋トレやシュート練習など)ことを特に意識していて、勉強では課題の締切などは自分の中で前日に設定して絶対に遅れないようにし、すべて英語なので人の2倍かかることを前提に1日のタスクを明確化しています。
ここまで生活してきた中で気合だけではカバーできないと気づき、やり方を変えました。

チームの雰囲気や文化、日本との違いを感じることはありますか?

とても明るい雰囲気です。ロッカールームでは毎日みんなが踊っているほどです。この雰囲気はなかなか日本で味わったことがなく、最初は驚きましたが、その明るさが自分をポジティブにしてくれます。
また、英語のアクセントは国によって大きく異なります。フランス人の英語は聞き取りづらいと感じることもありますし、スペイン語話者の英語は早口に聞こえることもあります。
今年はチーム全体としてはサッカーへの意識が高く、チームの雰囲気も非常に良いです。とても良い環境が作れているように感じます。

コーチやチームメイトと英語でコミュニケーションをとるうえで最初に苦労したことは?

生きた英語の中に入っていったとき、何を言っているのか本当に分からないところからのスタートでした。会話の単語が分からず、ミーティングや自己管理に関する話題もすべて英語です。自分の思いを素直に伝えられないことが一番つらかったです。

アメリカの女子サッカーのレベル感や試合環境は日本と比べてどうですか?

ジュニアカレッジ全体のレベルは全部が全部極端に高いわけではないのが正直なところですが、フィジカルやスピードに優れた選手ははっきりといます。その中でもトップレベルは高いと感じます。
環境面は日本と大きく異なり、今の大学だとサッカーコート2面、ジム、フィールドハウス・クラブハウス、トレーナールームなどが整っています。プロに近いような環境だと感じます。
寮を出てすぐフィールドがあり、窓からも見える距離です。

生活・メンタル・サポート体制

寮やアパートなど、住環境はどのようになっていますか?

2人部屋×2の4人1ユニットで、共有リビングがある寮の形です。キッチンはユニット内にはなく、冷蔵庫と電子レンジがあり、レンジ調理で簡単な料理を作ることがあります。
以前はルームメイトと相性が合わなかったり生活スタイルが違いすぎることで困ったこともありましたが、現在は解決し、生活に困ることはありません。
今のルームメイトはスイスからの留学生で、同い年です。信頼関係が築けていて生活しやすいですし、文化の違いを共有できる点も良いと感じます。
今年はインターナショナル生が多く、色々なバックグラウンドの選手が共存しているのもおもしろいところです。

食事や健康管理はどうしていますか?

基本は学食ですが、油が多い日は避けるようにしています。日本食を自分で作る日もあります。白ご飯と味噌汁(インスタント)なども日本からすこし持ち込んでいたり、近くのスーパーで白ご飯や野菜も手に入ります。
日本の調味料を持っていけば日本食は作れます。体に悪いものはなるべく取らないよう心掛けていますが、工夫次第で色々できることがあります。

怪我をした時のサポートはどうですか?

足首を捻挫した際には、トレーナーが病院へ同行してくれました。費用は保険でカバーされたので自己負担等はありませんでした。
トレーナールームでは鍼や電気治療、テーピング、マッサージなどが受けられます。日本の接骨院にいくような感覚に近いかもしれません。サポートは充実していると思います。
監督はメンタル面の配慮もしてくれていますし、様子を見ながら「今日は練習を軽めにして調整をしよう」といったように選手の状況にあわせてコンディション管理も行ってくれます。

ホームシックや不安な時、どうやって乗り越えましたか?

ホームシックはほとんどありません。
ただ、すべて英語が続いたり、食事が合わないと感じたりすると苦しくなる時はあります。そういう時は日本の友人やアメリカの別の地で頑張っている友人や先輩と話して気持ちを整えています。
日本へ帰りたいと強く思うことはあまりありません。周囲が明るく接してくれることに助けられています。

将来のキャリア・ビジョン

卒業後の進路として考えていることはありますか?

まず4年制大学へ編入し、できればNCAAを目指します。環境面も学びの幅も広がるからです。卒業後はプロでプレーするのが理想です。
また、大学院にも興味があり、学びは継続したいと考えています。
日本のサッカー界が世界一を目指せるよう、選手以外の立場でも支えられる人材になりたいとイメージしています。

アメリカでの経験が今後のキャリアにどうつながると思いますか?

しばらく生活してきてみて、アメリカのサッカーが強かったり、スポーツの規模が大きい理由がすこしづつ分かってきました。まだすべてを理解したわけではないと思いますが、それを日本に還元していきたいです。なので、まずはアメリカでしっかり学び切ることが大切だと考えています。

専攻はスポーツマネジメントに今は最も興味があり、副専攻で心理学や経済も学べたら理想的です。
大学とは思えない規模のフットボール部など大規模運営の現場を、インターンを通じて学んでいきたいです。

これから海外を目指す方へのアドバイス

高校生に「今からやっておくと良いこと」を3つ挙げるとしたら?

英語力強化、色々な人の話を聞くこと、フィジカルの強化です。

英語力は特にコミュニケーション英語も意識して勉強をしておけると現地で新しい生活になじむスピードは格段に違うと思います。やはり現場では教科書通りの英語を話す方がたくさんというわけではないのでそういうことも知っておくことも大切です。
あとは、色々な人の話を聞くのもとても重要だと思います。先輩、指導者のかた、サポート担当の方、色々な方から色々な視点や情報、アドバイスを聞いておくと、その先の生活のイメージはしやすいですし、なによりモチベーションが上がり、やりたいことが明確になります。
フィジカルの強化もアメリカでサッカーをしていくのであればキーになります。プラスでやはり自分の弱さを理解して、弱さを強さに変えるトレーニングもしっかりしておくということが大事だと思います。

留学を目指す選手へ、最後にメッセージをお願いします

今は不安なことが多いと思いますが、まっすぐ頑張っていればアメリカ留学は実現できると思います。それを乗り越えたら、楽しくて頑張れる環境がアメリカにはあります。
それを求めて、自分を信じて頑張ってほしいです。
不安も楽しいことも、その瞬間が全部自分のためだし、こっちに来てからの原動力になるのは間違いないです。自分を信じてください。

私ももちろんまだまだ頑張ります!

最後に

今回のインタビューを通して強く感じたのは、川渕さんのまっすぐな挑戦心と、自分を信じて努力を積み重ねる姿勢でした。
アメリカ進学という大きな挑戦には、言葉の壁や文化の違い、そしてサッカーという競技の厳しさが伴います。実際に、英語で自分の気持ちを伝えられなかった悔しさや、異国での生活に不安を感じる瞬間もあったと話してくれました。しかし、そのたびに周囲の仲間や自分自身を信じ、前に進んできた姿がとても印象的でした。

特に、「英語力はコミュニケーションのために磨く」「先輩や経験者の話を聞く」「自分の弱点を理解しフィジカルを強化する」という具体的なアドバイスは、これから留学を考える選手にとって大きなヒントになるはずです。

川渕さんの挑戦は、サッカーを通じて海外に飛び出すことがどれほど大変で、ただどれほど価値のある経験になるのかを教えてくれました。
川渕さんの真剣なまなざしとポジティブなエネルギーでこれからもどんどん活躍していく姿が楽しみです。

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